ランリーマン物語 第1話

2022年11月6日に開催された富山マラソン。

それは、職場の水越進一(のぶかず)こと「ランリーマン」にとって、特別な日だった。

今年の春頃から始まった彼の独特な生活スタイルに、社員の誰もが驚かされた。

「今朝は、通勤前に20km走ってきました」

「え?なにそれ」

「今日は、仕事が終わってから20km走ります」

「は?まじか!」

そんな会話も、秋になる頃には普通になっていた。

「水越君、今朝は何キロ走ったの?」

「今日は大会が近いので、30kmくらい走りました」

「気合入ってるね~w」

「黒部マラソン(3位)も、魚津・滑川ハーフマラソン(3位・2位)も通過点で、今年の最終目標は、富山マラソンのリベンジなんです」と彼は語る。

思えば、あれからもう1年が経ったのだなとしみじみ思う。

― 1年前 ―

コロナ対策により昨年の大会が中止となり、2年ぶりに開催された2021年の富山マラソン。

私は北代~長岡墓地あたりの沿道で、手製の応援プラカードを持って立っていた。

会ったこともない「水越さん」という助っ人ランナーを待ちわびていた。

「まだ来ないね・・・」

トップの須河さんが通過してから、幾人ものランナーが力強い足取りで駆け抜けていく。

随分と時間が経つけれど、待ちわびている赤いユニフォームを着たランナーは、なかなか現れてくれなかった。

緩やかな登り坂は、残り3,5kmにさしかかったランナーたちをもれなく苦しめていた。

結果は18位。ゴールした彼はとても疲れきった表情で、申し訳なさそうに座っていた。

「もし機会があれば、来年またリベンジしに来てください」

私は彼の心中を察しながら、そんな言葉をかけた記憶がある。

 

社長から驚きの相談を受けたのは、富山マラソンが終わってちょうど1週間が経った頃だった。

「新しく住宅販売の仕事を立ち上げるにあたって、営業マンが足りない。富山マラソンに出てくれた水越を採用しようと思っているのだけど、どう思う?」

 

― 次回につづく ―    wrote by S.K

 

【主な登場人物】
水越進一のぶかず(ランリーマン)・・・物語の主役。VILLAX富山の営業マンとして働きながら、富山マラソンでの優勝を目指している。

私(S・K)・・・VILLAX富山のおもてなし担当。社長の弟で、営業サポートを任されている。
社長(T・K)・・・(株)レノベシオン社長。(株)岡部の社長と同級生で、同社VILLAX富山の営業部門を委託されている。

ランリーマン物語 第2話